Research Highlights
研究ハイライト
水素高炉用焼結鉱の組織と品質
製銑工程においてCO2排出量を削減するには、被還元性や強度などの点で優れた焼結鉱の製造が求められています。焼結鉱とは、鉄鉱石と石灰石を混合し高温で焼成したもので、高炉の主原料です。焼結鉱は、主にヘマタイト(Fe2O3)、マグネタイト(Fe3O4)、カルシウムフェライト、スラグで構成されていますが、これらの中で特に焼結鉱の高品質化を担う重要な鉱物相が、針状を呈した多成分カルシウムフェライト(Silico-ferrite of Calcium and Aluminum, SFCA)です。SFCAはFe2O3、CaO、Al2O3、SiO2、MgOから成る酸化物固溶体で、図のような複雑な結晶構造を持ち、結晶構造もSFCAの他にSFCA-I、SFCA-II、SFCA-IIIと計4種類存在することが知られています。しかし、これら酸化物固溶体の組成域や、SFCA系の組成、結晶構造、形態が、それぞれ被還元性にどの様に関連するかは明らかにされていません。そこで、当研究室では以下の研究に取り組んでいます。
– SFCA系の組成域を含む状態図作成
– SFCA系の組成と結晶構造が被還元性に及ぼす影響解明
– SFCA系のFe2O3の活量測定
– 水素吹込み高炉に適した焼結鉱組織
鋼の連続鋳造用モールドフラックスの結晶化と伝熱
鉄鋼製造では精錬工程で純度を高めた溶鋼を連続鋳造工程によって凝固させます。この連続鋳造工程では、鋳片/鋳型間の潤滑性を保つためにモールドフラックスと呼ばれる合成スラグが用いられますが、モールドフラックスは潤滑性だけではなく鋼の冷却速度を制御し、鋳片の品質向上に貢献します。当研究室ではモールドフラックスの伝熱制御の一環として、モールドフラックスの組織制御と熱物性に関する以下の研究に取り組んでいます。
– 結晶相、ガラス相及びスラグ融体の熱伝導率測定
– モールドフラックスの状態図作成
– モールドフラックスの結晶化挙動
鉄鋼スラグのセメント・ジオポリマーへの応用
製鉄工程では副産物として大量の鉄鋼スラグが生成されます。鉄鋼スラグには大きく分けて、高炉スラグと製鋼スラグがあります。高炉スラグはセメントの原料に用いられており、製鋼スラグは路盤材や焼結鉱の原料に用いられています。高炉スラグセメントは、石灰石の焼成を必要としないためCO2排出量の削減に大きく寄与します。近年、高炉スラグやフライアッシュを原料とするジオポリマーと呼ばれるセメントの代替材の研究開発がすすめられています。ジオポリマーは焼成工程を必要としないため、高炉スラグセメントよりさらにCO2排出量削減が見込まれています。当研究室では、鉄鋼製錬のカーボンニュートラル化にともなうプロセス変革によりスラグ組成が大きく変化しても、セメントやジオポリマーへのリサイクルに対応するため、スラグ構造の観点からスラグのリサイクル性を追求しています。